アイルランド音楽の基本情報

Introduction to Irish Tradional Music

私が演奏するアイルランドの音楽とはどんな音楽かを説明したページです。

目次

アイルランド音楽とは 

What is Irish Traditional Music?

 アイルランド音楽(アイリッシュミュージック)は、イギリスのお隣の島国、アイルランドで伝統的に演奏されている音楽です。

アイルランド

アイルランドはイギリスのお隣の島国です。

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 アイルランドの伝統的な音楽というと「ロンドンデリーの歌(ダニーボーイ)」や「庭の千草」といった、日本でも古くから親しまれているアイルランド民謡を思い浮かべる方も多いのですが、これらの曲は現地ではあまり弾かることがありません

日本でもお馴染みのアイルランド民謡「庭の千草」。

美しい曲ですが、アイルランドで聞かれる機会は意外と少ないかも。(まったくないわけではないですが)

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 アイルランドの音楽というと、世界的なロックバンドU2や、世界的なポップス歌手のエンヤが歌う歌も「アイルランド人が演じている音楽」という意味では、アイリッシュ・ミュージックの一部とも言えないこともないですが・・・

U2やエンヤのような音楽は「アイリッシュ音楽」ではなく、ポップスやロックに分類されます。

アイルランドを代表する世界的なロックバンド「U2」。彼らの音楽は所謂「アイリッシュミュージック」とは程遠いものです。


∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 アイルランドで今日「アイリッシュミュージック」と言えば普通は「リール」や「ジグ」などのダンス曲や、アイルランドの伝統的な歌唱法「シャンノース」の歌を指します。

アイリッシュ・フィドルによるアイルランドの伝統的なダンス曲の演奏です。リールというタイプの曲を3曲続けてメドレーで弾いています。

アイルランドの伝統的な歌唱法「シャンノース」の歌。シャンノース(Sean-nós)とはアイルランド語で「古い様式」という意味で、アイルランド語で歌われることが多いです。


ケルト音楽とアイルランド音楽

Difference between Irish & Celtic Music

 アイリッシュ音楽のことを「ケルト音楽」と呼ぶ人もいるようですが、「ケルト」というのはアイルランドやスコットランド、フランスのブルターニュ地方やスペインのガリシア地方などの文化を総称する言葉であって、実際のところは「これぞケルト音楽」というのは存在しません

 日本や中国、韓国の音楽を総称して「アジアン音楽」と呼ぶのと似たような感じでしょうか。

 アイリッシュ音楽は基本的にはアイルランド独自のものであり、その他のケルト文化を持った国の音楽とまったく一緒のものというものでもありません。(アイルランド音楽が弾ければブルターニュ地方の音楽も弾けるとは限らない、あるいはその逆も然りということです)

 ちなみにアイルランドの人で自国の音楽のことを「ケルト音楽」という人はまずいないと思います。

この動画で演奏されている楽器は、「イリアンパイプス(Uileann Pipes)」と呼ばれるアイルランドの伝統的なバグパイプです。

こちらはフランスの「ケルト文化圏」ブルターニュ地方のバグパイプの演奏です。


 どちらもバグパイプの演奏ですが、これらを「ケルト音楽」として一緒のものとして考えてしまうのは若干無理あります。

 もっとも下の動画のような形態のバンドが演奏している音楽になると、純粋なアイルランドの音楽ではないし、「どこそこの音楽」と定義するのは難しいので、こういうグループの音楽だと「ケルト音楽」と言うのかもしれません。

ケルトとアフリカを融合させたバンド「アフロ・ケルト・サウンド・システム」

アイリッシュ音楽で使われている楽器

Instruments used in Irish Traditional Music

*当サイトにはアイルランド音楽で使われている楽器についてもっと詳しく書いてあるページもあります。

 フィドル(バイオリン)やイリアンパイプス(アイルランドのバグパイプ)などは伝統的な楽器として古くから演奏されています。

アイリッシュフィドル
イリアン・パイプス

左(上)*がフィドルで、右(下)がイリアンパイプス。どちらもアイルランド音楽で古くから使われている楽器です。*スマホで見た場合

  ハープ(竪琴)はアイルランドの硬貨や国の紋章としても使われているアイルランドを代表する楽器です。

アイリッシュ・ハープ

ハープはアイルランドを象徴する楽器です。

アイリッシュハープが描かれたユーロの硬貨
アイルランドのユーロ硬貨。裏にはハープが描かれています。
ハープが描かれたパスポート
ハープはアイルランドのパスポートにも描かれています。

アイリッシュハープによるアイルランド伝統曲の演奏。


 他にも映画タイタニックにも登場したアイルランドの小さな縦笛「ティンホイッスル」やフルートコンサーティーナとよばれるアコーディオンの仲間の楽器など様々な楽器が演奏されています。

ティンホイッスル
ティンホイッスル
コンサーティーナ
コンサーティーナ

 アイルランド音楽で使われる楽器についてはこちらのページもご覧になってみてください。

アイルランドで演奏されている曲

Tunes played in Irish Traditional Music

 リールやジグ、ホーンパイプなど踊りのための曲や、「シャンノース」と呼ばれる古い歌唱法で歌われる歌などがあります。

リールとはこんな感じの曲です。

アイルランドの高校生たちによるジグの演奏。


アイルランドで演奏されている曲についてはこちらのページをご覧ください。

演奏される場所について

The places where Irish Traditional Music is played

 アイルランドの音楽は様々な場所で演奏されます。

 

 ステージ上で大勢のお客さんを前に弾くこともありますが、アイリッシュパブ(アイルランドの居酒屋)や家のキッチンなど、日常生活に密着した場所で演奏することの方が多いです。

 

 アイルランドの曲の多くはダンスのための曲なので、ダンスと一緒に演奏されることもあります。

アイリッシュパブ(居酒屋)での演奏風景

屋外でダンスと一緒に演奏している模様


アイルランド音楽のセッションについてはこちらをご覧ください。

アイルランド音楽の演奏の特徴①

characteristics of playing Irish traditional music

基本はユニゾンプレイ (全ての楽器が全く同じ旋律を演奏する)

 アイルランド音楽の演奏の特徴として、ユニゾンプレイというのが挙げられると思います。アイルランド音楽は複数の異なる楽器の演奏家が一緒に弾く際に、全ての奏者が全く同じ旋律を同時に弾くのが特徴です。カウンターラインやハーモニーなどは基本的には付けません。

アイリッシュフィドルとアイリッシュフルートによる演奏です。二人で全く同じ旋律を弾いています。

フィドルとイリアンパイプスによる演奏です。二台の楽器が二台とも全く同じメロディーを弾いています。


∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

コンサーティーナとアイリッシュフルートとアイリッシュハープによる演奏。3人が3人とも同じメロディーを弾いています。

フィドルとバンジョーによるデュエット演奏。フィドルとバンジョーが弾いている旋律は2台とも全く同じ演奏です。


∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 最近は主旋律以外の旋律を加えたり、ハーモニーを付けたり、なかには伝統音楽のメロディーにオーケストラによる伴奏を入れたりなど、新しい手法をとった演奏をする人も現れています。

アイリッシュピアノとオーケストラの共演です。

ピアノを弾いている方がオケのスコアを書いたそうです。

アイルランド音楽の演奏の特徴②

 アイルランド音楽は基本的にはユニゾンプレイの音楽です。

 

 つまりある曲をフィドルで弾こうと、バンジョーで弾こうと、ハープで弾こうと、ティンホイッスルで吹こうと、主旋律は全く同じです。

 

 一つどれかの楽器で曲が弾ければ、その曲は他の楽器で弾いても同じですので、アイルランドには「マルチプレーヤー」といって複数の楽器を弾ける演奏家も多くいます。

 下の動画の演奏家はアイリッシュハープとフィドルとコンサーティーナを演奏します。一緒に弾いている別の女性は姉妹で、彼女もこの動画ではイリアンパイプスとアイリッシュフルートを演奏しています。

アイリッシュハープ

フィドル



コンサーティーナ


アイルランド音楽の演奏の特徴③

譜面通りに弾かないのが普通

 アイルランド音楽は、楽譜通りに弾く音楽ではないということも、この音楽の演奏における特徴の一つです。

 下の曲はアイルランドの伝統曲をmidiで譜面通りに再生させたものです。

 この曲を実際に楽器で演奏すると以下のように演奏されます。

上の譜面と同じ曲をフィドルで演奏した例です。演奏者は譜面と同じ曲を3回繰り返して弾いています。

こちらの奏者も譜例と同じ曲を3回繰り返して弾いています。ただし調を一つ落として弾いています。アイルランドの音楽では楽譜に書いてあるのとは異なる調で弾くこともあります。


∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 次の曲もアイルランドの伝統曲をmidiで譜面通りに再生させたものです。

 この曲を実際に楽器で演奏すると以下のように演奏されます。

上の譜面と同じ曲をフィドルで演奏した例です。演奏者は譜面と同じ曲を5回繰り返して弾いています。

こちらの奏者は上の譜例の曲を3回繰り返して弾いています。譜面と同じ曲ですが、譜面に書かれているのと全く同じ通りには弾いていません。


∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 またアイルランド音楽の演奏では「装飾音」と呼ばれる「ある音を飾り付けるための別の音」を付けながら演奏します。装飾音は楽譜に書き表すのが難しいので、基本的に楽譜に書かれることはありません。装飾音についてはこちらをご覧になってください。

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 このようにアイルランドの音楽は基本的に楽譜通りには弾かないのが基本です。また1曲を数回繰り返して弾くのが基本で、同じ曲を繰り返して弾く際に、前に弾いたのと全く同じ通りに弾かないのも基本です。曲の繰り返しのたびに「バリエーション」と呼ばれる異なる旋律を加えながら演奏するのが一般的です。バリエーションは即興的に付けられることがほとんどで、それだけにアイルランド音楽では譜面はほぼ無用の長物となっています。

譜面通りに弾くことがほとんどないのにも関わらず、色々な譜面が市販されています。こちらのページではアイルランド音楽関連の教則本や曲集を紹介しています。

アイルランド音楽の学び方①

Learning to play Irish traditional music

 楽譜を使わずに耳で聞いて学ぶのが基本です。

 

 まれに視覚的に曲を参照するために「ABC譜*」とよばれるアルファベットで書かれた譜面を使うことがあります。

*ABC譜についてはこちらをご覧ください。

アイルランド音楽 楽譜

アイルランド音楽でよく使われる「ABC譜(※)」。

暗号でもなんでもなく、れっきとした楽譜なのです

アイルランド音楽 楽譜

現地のフィドルのワークショップ(グループレッスン)でABCで譜面を書いていくフィドルクラスの講師。(アイルランドでは超有名な奏者です。)

「ABC譜」についてはこちらをご覧ください。

・アイルランド音楽で使われる「ABC譜」について

アイルランド音楽の学び方②

how people in Ireland learn traditional music

 本国アイルランドでは親や親戚の人などから習ったり、教室に通って習うことが多いです。独学で学んだ人というのはあまり聞いたことがないです。アイルランド音楽は楽譜を使うことなく*、人から人へと受け継がれてきた伝統音楽ですので、独学で学ぶのは難しいようです。

 アイルランドには自国の伝統音楽の伝承者を育成する公的機関として「Comhaltas Ceoltóirí Éireann(略してCCÉ)」という協会があります。アイルランドにはCCÉの運営している教室があって、CCÉの教室であれば親や親族が演奏家でなくても、誰でもアイルランド音楽の演奏を学ぶことができます。

 CCÉでは「Scrúdú Ceol Tíre (略してSCT Exam)」*というアイルランド音楽の演奏技能検定試験や、「Teastas i dTeagasc Ceolta Tíre (略してTTCT)」というアイルランド音楽の公認講師になるための試験を実施しています。

 アイルランド以外の国にもアイルランド公認の講師資格を持った講師が居ます。各国の公認講師が教える教室で学ぶのも良いと思います。私自身も公認講師資格を持っていますので、私のレッスンでは本国アイルランドで学ぶのと全く同じレッスンを受けていただくことができます。

*曲の旋律だけが書かれた楽譜ならありますが、あくまで旋律が書かれているだけであって、演奏法までは書かれていないものがほとんどです。こちらのページに市販されているアイルランド音楽の楽譜や教則を紹介しています。

*SCT Examは日本でも受験可能です。SCT Examについてはこちらのページをご覧ください。

NHKで放映されたアイルランド音楽の番組から抜粋です。

アイルランド音楽の学び方についてざっとお分かりいただけると思います。

こちらのページで上の動画の長いバージョンをご覧いただけます。

フィドルとバイオリンの違い

Difference betwen the fiddle and the violin

 フィドルとは弓で弾く弦楽器の総称です。

 

 たとえば中国の二胡(胡弓)もフィドルの仲間で、英語では「Chinese Fiddle(チャイニーズ・フィドル)」と呼ばれることもあります。

 

 有名なミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」の原題は「ザ・フィドラー・オン・ザ・ルーフ (The Fiddler on the Roof)」と言います。(フィドラー =フィドルを弾く人)

 

 世界中には様々な弓で弾く弦楽器があり、これらは全てフィドルの仲間になります。


左(上)はノルウェーの伝統的なフィドル「ハーダンガーフィドル*」、右(下)はスウェーデンの伝統的なフィドル「ニッケルハルパ」。これらもれっきとしたフィドルの一種です。*ハルダンゲル・バイオリンとも

 アイリッシュ音楽で使われるフィドルは、普通のバイオリンと全く同じものです。

 呼び方の違いだけで、クラシックの奏者が弾けばバイオリン、アイリッシュ音楽の奏者が弾けばフィドルと呼び方が変わるのです。

アイリッシュフィドルの演奏。

アイリッシュ音楽で使われるフィドルは普通のバイオリンと全く同じものです。


アイリッシュフィドルについてはこちらをご覧ください

アイルランド公認のフィドルの認定講師のレッスンはこちらで。

当サイトにはこのページ以外にもアイルランド音楽に関連したページが多数あります。音楽関連のページのサイトマップがありますので、よかったらご覧になってください。